Steve Jobsの公開書簡「Thoughts on Music」は、Apple及びMacintoshやiPodに興味と持つ人々の間で大きな反響を呼んでいるようです。maclalalaweblogさんが仮約として日本語訳を掲載しているのを読みました。
「Thoughts on Music」については、maclalalaweblogさんのサイトを見ていただくことにして、ここでは私感など。
そもそもの始まりは、AppleがFairPlay(Apple独自のDRM)を他社にライセンスしないことで市場を独占的に支配していることに対し、欧州の消費者団体などがFairPlayを他社にライセンスするようAppleに求め、それをAppleが拒否した(あるいは積極姿勢を見せない)ことに対する非難です。
書簡の結論は、「もしFairPlayが嫌なら、Appleを非難するのではなく「音楽大手4社」に対してDRM フリーで音楽を販売するようレコード会社を説得することだ。それで真に互換性のある音楽市場が創出される。Appleは、諸手を挙げてこれを受け入れる」と言うもの。
この書簡でのAppleの考えでは、「DRM問題の本質は、FairPlayをライセンスするかしないかということではなく「音楽大手4社」の販売条件」ということになっています。
現状のiPodの市場シェアを考えれば、これは事実上「独占か全開放か」の二者択一を前提としていて、ある意味問題のすり替えとも言えそうな内容ですが、音楽流通の90%以上を占める音楽CDにプロテクトがないことまで引き合いに出して「本来あるべき姿は、DRMなど必要のない市場の全開放であるべき」という結論は、いかにも近年のJobsらしい誰にも反論できないモノになっていると思います。同時にこの結論は、「音楽大手4社」にしてみれば、多分検討することさえムダなくらい論外の結論とも言えるでしょう。
すなわちJobsは、この書簡を出すことで巧妙にAppleの「常にユーザ本位のフェアな姿勢」をアピールしながら、結果として決して現状の独占的な市場を手放さないことを宣言したのだと思います。
私的には、この決断は、ビジネス的に正しいのではないかと思います。今のiPodは、ハードウェア的に、かつてのMacintoshのような先進的な独自部品や独自規格の固まりではなく、汎用技術を組み合わせたオープンな仕様でできています。つまりハードウェアの製造コスト競争で圧倒的に不利な状況に追い込まれる心配はなさそうです。ソフトウェア的に見ても、「音楽大手4社」のコンテンツを全て押さえ、更にビデオへの進出、Podcastの普及など、かつての轍は踏んでいません。
しかも既に世界進出を果たしており、世界的なデファクトスタンダードの地位も確保しています。今回の書簡でiPodを巡るDRM論争を鎮めることができるのであれば、Appleとしては、それで万々歳でしょう。現状維持こそAppleの望むところなのです。
iPodビジネスの価値の源泉は、いち早くブランドを確立しコンテンツ配信のインフラを確立したことにあると思います。Appleは、日本のケータイ市場におけるNTT DoCoMoの位置にあり、今は、ダウンロード音楽市場の維持拡大=Appleの売上げ拡大に直結します。この後、iPodもiTunes Music Storeも、国毎に現在の日本のケータイ市場のように市場が飽和するときが来ると思いますが、その時にAppleがどうするのかは、iPhoneなど新たな道を探りながら、これから考えていけばいいことなのではないかと思うのです。
2007年02月08日
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